RESEARCH

メカノケミカル有機合成反応の開発

これまで膨大な数の有用な有機合成反応が開発されてきましたが、それらのほとんどは有機溶媒を用いて溶液状態で行われています。しかし、反応総重量の80%以上を占めると言われている溶媒は、そもそも反応の物質収支には含まれない無駄な存在であり、環境負荷や廃棄物増大の大きな要因となっています。このような背景の下、溶媒を用いずにボールミルによって合成反応を実施する試み(メカノケミカル合成)が注目を集めています。メカノケミカル合成ではボールミルの強い機械的攪拌を利用することで、効率の良い無溶媒反応を可能とします。しかし、精密有機合成反応への応用は限定的であり、その合成化学的有用性は不明確でした。

最先端の化学!メカノケミカル有機合成反応の開発

私たちは、”ボールミルでのみ可能な反応”の開発に焦点をあて、メカノケミカル有機合成の研究を2018年からスタートさせました。その結果、固体状態でのみ実現可能な選択的有機合成反応、不溶性化合物の分子変換、さらに従来の有機合成化学者がほとんど利用してこなかった機械的な力を活用する新反応の開発に成功しました。この研究は、基礎的な学問としての発展だけでなく、社会が必要とする医薬品、生理活性物質、有機分子材料を有害な有機溶媒を極力用いずに供給する新たな環境調和型合成手法の創出に貢献します。今後もこのメカノケミカル有機合成の可能性を探索していきます。

研究紹介記事

  1. “固体状態で進行するクロスカップリング反応を開発 ~有機溶媒の使用による廃棄物,コスト,毒性や安全性の解決へ~”
    『北海道大学プレスリリース』 (2019/1/10)
  2. “圧電材料を利用した新しい有機合成手法の開発~機械的な力を駆動力とする新しい環境調和型有機合成反応の開拓へ~”
    『北海道大学プレスリリース』 (2019/12/20)
  3. “溶けない化合物でも使えるクロスカップリング反応の開発~有機合成化学における「低溶解性による合成の限界」の解決に期待~”
    『北海道大学プレスリリース』 (2021/3/31)
  4. “不溶性アリールハライドの固体クロスカップリング反応”
    『Chem-Station スポットライトリサーチ』 (2021/4/20)
  5. “未来の物質を叩き出す”
    『北海道大学リサーチタイムズ』 (2021/6/9)
  6. “120年の歴史を塗り替える:ペースト状グリニャール試薬の合成に成功~有機溶媒の使用量を劇的に低減する新しい物質生産プロセスの構築へ~”
    『北海道大学プレスリリース』 (2021/11/18)
  7. “ボールミルを用いた、溶媒を使わないペースト状 Grignard 試薬の合成”
    『Chem-Station スポットライトリサーチ』 (2021/12/27)
  8. “簡便に発光ポリマーを調製する方法を開発~機械的な刺激によってポリマー材料に発光機能を付与する新手法~”
    『北海道大学プレスリリース』 (2021/5/14)

代表的な論文

  1. Mechanochemically Generated Calcium-Based Heavy Grignard Reagents and Their Application to Carbon−Carbon Bond-Forming Reactions
    Gao, P.; Jiang, J.; Maeda, S.; Kubota, K.*; Ito, H.* Angew. Chem. Int. Ed. 2022, e202207118.
    DOI: 10.1002/anie.202207118
  2. Mechanochemical Synthesis of Magnesium-based Carbon Nucleophiles in Air and Their Use in Organic Synthesis.
    Takahashi, R.; Hu, A.; Gao, P.; Gao, Y.; Pang, Y.; Seo, T.; Maeda, S.; Jiang, J.; Takaya, H.; Kubota, K.*; Ito, H.* Nature Commun. 2021, 12, 6691.
    DOI: 10.1038/s41467-021-26962-w
  3. Introduction of a Luminophore into Generic Polymers via Mechanoradical Coupling with a Prefluorescent Reagent.
    Kubota, K.*; Toyoshima, N.; Miura, D.; Jiang, J.; Maeda, S.; Jin, M.*; Ito, H.* Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 16003–16008.
    DOI: 10.1002/anie.202105381
  4. Tackling Solubility Issues in Organic Synthesis: Solid-State Cross-Coupling of Insoluble Aryl Halides.
    Seo, T.; Toyoshima, N; Kubota, K.*; Ito, H.* J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 6165–6175.
    DOI: 10.1021/jacs.1c00906
  5. Selective Mechanochemical Monoarylation of Unbiased Dibromoarenes by In-situ Crystallization.
    Seo, T.; Kubota, K.*; Ito, H.* J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 9884–9889.
    DOI: 10.1021/jacs.0c01739
  6. Redox Reactions of Small Organic Molecules Using Ball Milling and Piezoelectric Materials.
    Kubota, K.*; Pang, Y.; Miura, A.; Ito, H.* Science 2019, 366, 1500–1504.
    DOI: 10.1126/science.aay8224
  7. Olefin-accelerated Solid-state C–N Cross-coupling Reactions Using Mechanochemistry
    Kubota, K.*; Seo, T.; Koide, K.; Hasegawa, Y.; Ito, H.* Nature Commun. 2019, 10, 111.
    DOI: 10.1038/s41467-018-08017-9

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伊藤 肇 教授

E-mail: hajitoeng.hokudai.ac.jp